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スマートフォン子守の問題点後半

新年あけましておめでとうございます。

本年もいろいろ興味の記事をお送りしたいと考えています。ぜひご愛読お願いします。旧年中、このページが一時、途切れましたが申し訳ありませんでした。

今回は2022年11月号“スマートフォン子守の問題点”の後半です。

 

3言語の発達への影響

 赤ちゃんが言葉を獲得していくうえで、テレビやビデオの画面からは学習しないという研究結果があります。言葉はコミュニケーションをとるための大事な手段です。コミュニケーションは、まず目をあわせて、表情もみて、相手の様子を確認しながらの一方向ではない双方向のやりとりの繰り返しです。

 “いないいないばあ”は赤ちゃんの反応を見て、スピードを変えたり、声の出し方を変えたりしながら赤ちゃんを喜ばせる遊びのひとつですが、画面の向こうから赤ちゃんの反応に関係なく“いないいないばあ”をしても赤ちゃんは喜びません。赤ちゃんが言葉を獲得していくのは現実の体験の中で、それに相応した言葉を幾度となく聞くことが必要です。言葉はコミュニケーションの道具ですが、思考や感情の源でもあります。アプリなどで言える単語が増えたからと言って、言葉の発達が進んだと短絡的に考えることは危険だと言えるでしょう。

 

4体の発達に対する影響

 筋肉は使わないと発達しません。前庭感覚や固有感覚は自分の体を動かさないと発達しません。寝返りしたり、ハイハイしたり、つかまり立ちしたり、歩いたり、階段を上がり下がりしたりしながら総合的に発達させていくのです。こうした時間は筋肉だけでなく、自立神経や好奇心などの心の発達も促しています。3歳ぐらいまでの子どもは、普通はひっきりなしに動いています。静かにさせるためにタブレット端末を与えていると、それは体を動かさない時間になります。日本小児科医会は“遊びは子供の主食です”という啓発ポスターを作製しました。体を動かして、言葉を交わし、人とかかわる。こうした生活時間を奪われていることに気づくことが大切です。

 

赤ちゃんにスマホを見せるべきか

 赤ちゃんもスマホに夢中になることをご存じでしょうか。赤ちゃんに同じ画面を見せ続けるとすぐに飽きてしまいます。画面を変えたり、抑揚のある音によって、赤ちゃんは画面に注目します。このことを利用して赤ちゃんが喜ぶように作られているコンテンツがたくさんあります。画面の中の色玉がコロコロ転がっていくようなのも喜んでみますが、現実に玉を転がして見せてあげる場合は、視野が広い、動かす目の範囲も広い、奥行きもある、触って喜ぶこともできる、触ればやわらかいのか硬いのか、重いのか軽いのかもわかるなど、脳への刺激は画面から受けるよりはるかに豊かです。

以上の点から、赤ちゃんにスマホは必要ないというのが大原則です。

幼児期でも、何のために何をどれくらい見せるのか、親の管理のもとで注意して使っていただきたいと思います。米国小児科学会は、時間と視聴内容について、特に子供の場合、心身の発達に大切な時間と体験を奪ってしまうと警鐘を鳴らしています。そして、18か月までは原則見せないように、その後も時間制限や保護者と一緒にという提言を出しています。

赤ちゃんにどう声掛けしたらよいかわからない、あやし方がわからない、子どもの外遊びに付き合う時間がない、家事をする時間を確保したいなど、大人側の理由はいくらでもると思いますが、子どもの発達には睡眠、食事、体を使っての遊び、人との関わりが欠かせないことを忘れずに、電子機器の利用の仕方を考えていただきたいと思います。

 

身に着けたいメディアリテラシー

 手のひらサイズのスマホで、簡単に多くの情報がえられるようになりました。もちろん、便利ですから上手に活用すればよいと思います。特に、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、小児科医療機関などに直接行って医療情報や子育てに関する情報を得る機会も減っている中で、ネットの情報を頼りに過ごしている方も少ないないかもしれません。ネットに限らず、テレビや雑誌の情報が正しいのか、そうでないのか、見極める力も必要です。“誰が”“どんな目的で”“どんな根拠に基づいて”発信しているか、吟味する目を養う必要があります。子育てや子どもの病気や症状についてネットで調べて不安になり、さらにそれを解消しようとネットで調べて・・・と悪循環に陥っているケースガ少なくありません。

 メディアリテラシー教育は、日本ではなされていませんでしたので、あふれる情報に振り回され、騙されていることも少なくないのが現状だということも念頭に置いておかなくてはなりません。

 一方でスマホは、ネット予約、予防接種スケジュール管理、成長曲線などの記録に活用できます。発疹がでた時の写真、咳やいびきの録音や動画、下痢便や嘔吐物の写真など診療に役立つものもたくさんあります。外来受診時にこうした情報があると診断の手助けになることを保護者に伝えるとよいでしょう。

 

かかりつけ医機能を発揮しましょう。

 赤ちゃんが産まれると、産婦人科や小児科で1か月健診、保健師による新生児訪問、そして2か月からスタートする予防接種や乳児健診で毎日のようにかかりつけ医を訪れます。それぞれの月齢で分からないことや心配があり、個別に相談事があります。気軽に相談できる、相談したら安心したという“かかりつけ医機能”をぜひ発揮していただきたいと思います。そして、泣き止ませるため、静かにさせるためといった理由で、安易にスマホやタブレット端末の画面を見せることは避けた方がよいとアドバイスすると同時に、子育ての労をねぎらい、あやし方や遊ばせ方のアドバイスをしたり、地域の子育て広場など、さまざまな子育て支援の資料を提供してあげてください。

 乳幼児のメディア漬けを予防するためにも保護者の心配ごとに寄り添うかかりつけ医機能を発揮していただきたいと思います。