2015年、日本は“麻疹排除国”にWHO(世界保健機構)から認定されました。麻疹排除国とは“適切なサーベイランスシステムが存在する国、または地域において、12ヶ月間以上、伝播を継続した麻疹ウイルス(国内由来、国外由来を問わず)が存在しない状態”と定義されています。
このことは、日本には、現在日本固有の遺伝子を持った麻疹ウイルス(土着株)は存在しないことを意味します。熱が出て、全身の赤い皮疹が出るなど、一見麻疹を疑わせる患者さんも、最近海外旅行をしてない時や、海外渡航歴のある方に接触してない限り、麻疹は考える必要がないと言うことです。
しかし、図1に示しますが、麻疹は毎年ではないですが、小流行を繰り返しています。

上図は、2019年から2026年までの8年間の麻疹累積報告数を示しています。
2020年から2024年はほとんど麻疹患者が見られません。おそらく新型コロナウイルス感染症の大流行と関係していると思われます。新型コロナウイルス流行前の2019年、新型コロナウイルス流行後の2025年、2026年には年間200-300人から700人ぐらいの小流行が見られます。

上の図2は2026年度の週別麻疹報告数です。ピークは第16週(4月13日から4月19日)で1週間当たり71名が報告されています。その後急速に低下しています。
また世界でも麻疹報告数は多く、新型コロナウイルス大流行前の2019年は54万人、新型コロナウイルス流行中は、2020年は9万3千人、2021年は5万9千人と減少していたのですが、コロナ流行後、再度増加傾向にあります。2022年17万人、2023年 32万人、2024年 35万人、2025年27万人と再上昇しています。

世界中で麻疹罹患者が増加しているのは、診断の遅れと、麻疹ワクチン接種率の低下が原因と考えられています。診断の遅れは、修飾麻疹が比較的多いことと、麻疹を実際に臨床で診察したことのある医師が少ないことなどが考えられています。修飾麻疹は典型的な麻疹の症状を示さない麻疹を言います。潜伏期が長い、皮疹が少ない、熱が出ない、コップリック班(麻疹で見られる口腔の粘膜疹)が見られないなど、麻疹の診断が難しい症例を指します。もう1つの原因はワクチン接種率の低下です。2024年の世界のデーターですが、麻疹含有ワクチン1回目接種の接種率は84%、2回目接種の接種率は76%でした。集団免疫に必要な2回目接種率が95%で、このレベルに達していません。
2024年、日本では1回目接種率は92.7%、2回目接種率は91.0%でした。
麻疹はウイルス感染症です。治療は対象療法のみです。麻疹ワクチン接種による予防が最も効果があり、もっとも大切です。