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トピックス TOPICS

ワクチンの最近の話題と小児感染症

子宮頸がんワクチン

子宮頸がんワクチン(HPV)は、3種類のワクチンが使われています。2価のサーバリックス、4価のガーダシル、9価のシルガードですが、シルガードは9種類のヒトパピローマウイルス株をカバーしているため、最も多く使われています。

今のところ、女児のみがシルガード9の対象で、定期接種になっていましたが、8月25日厚生労働省は肛門がん、陰茎がん、性感染症の尖圭コンジローマの予防を追加し、男性にも接種を拡大すると発表しました。対象は9歳以上で、接種回数は15歳未満で2回、15歳以上で3回。男性については公費負担となる定期接種ではないため、自費での任意接種となりますが、健康被害が出た場合は救済制度があります。これまで国内で男性向けに承認されていたのは、肛門がんと尖圭コンジローマの予防を目的とした4価ワクチン(ガーダシル)のみでした。

欧米では男性にも定期接種が進んでおり、厚労省の専門部会が議論を継続しています。東京都など自治体が独自に接種費用を助成する動きも広がっているとのことです。

 

日本脳炎ワクチン

千葉県成田市の1医療機関から、周辺地域では近年報告がなかった日本脳炎患者が、2022―2024年に連続して3例報告されました。患者は60-80代で、8-10月に発生しました。1例はPCR検査で確定診断されましたが、2例はPCR陰性で、専門の検査機関で確定診断されました。日本脳炎の患者報告がない地域でも、気温の高い季節に原因不明の脳炎、髄膜炎症例を見た場合、日本脳炎を疑う必要があると警告しています。

日本脳炎はコガタアカイエカによって媒介され人に感染します。感染者の100人から1000人に1人が発症し、残りは症状のない不顕性感染となります。しかし1度感染し発症すると適当な治療法がなく、対症療法しかありません。死亡率は40%と高く、いろいろの神経症状を残します。そのため予防が大切になります。蚊に刺されないことも1つの方法ですが、3歳時に始まるワクチン接種が最も効果的な予防になります。

 

2025年の手足口病とヘルパンギナ(夏風邪)の動向

手足口病とヘルパンギーナの流行年の発生動向は、過去10年において新型コロナウイルス感染症の流行年を除き、第20週(5月中旬)に増加傾向を示し、第30週(7月下旬)に、手足口病は定点あたり10.0程度の、ヘルパンギーナは定点当たり3.0-4.0のピークを迎え、その後徐々に低下し、48週―50週(年末)に終息するパターを示します。

今年は、手足口病はほとんど流行が見られず、28週(7月初旬)0.61でした。

一方ヘルパンギーナも例年と比べ発生数は少なく、30週(7月下旬)で1.63でした。ちなみに昨年2024年の手足口病のピークは28週で定点あたり13.7。ヘルパンギナは28週で定点あたり1.79でした。今年は手足口病が大きく減少し、ヘルパンギーナは2024年とほぼ同じレベルでした。

新型コロナウイルスが世界中で流行した時、その他のウイルス感染症が減るという現象を経験しましたが、これはウイルス同士が影響し合って起こったことか、新型コロナウイルスの感染を防ぐために人間がとった行動が影響したのか今のところはっきりしません。今後、解明されると思います。